耳元 で そっと 何 か 言っ た の。 耳元 X 耳元でそっと

データでロック☆オン!!

耳元 で そっと 何 か 言っ た の

私を攫って、探偵さん(3)何もかも忘れさせて、あなたの腕の中で 私を攫って、探偵さん byドミ (3)何もかも忘れさせて、あなたの腕の中で 新一は米花駅で電車を下りて蘭と共に夜道を歩いていた。 歩き疲れたと言う蘭の為に、公園のベンチで一休みする。 蒸し暑い日だったが、夜の空気はやや冷えて、風は湿気を帯びていたものの心地良かった。 夜の公園はアベックが多く、あちこちで妙な雰囲気が漂っており、新一と蘭は落ち着かない気分になっていた。 新一は思い切ってそっと蘭の肩を抱き寄せてみた。 蘭は一瞬身を強張らせたが、すぐにそのまま新一の肩に頭を寄り掛からせて来た。 少し擦り寄るようなその動作に、新一の理性は簡単に吹き飛んでしまう。 蘭の頬に手を当て、じっと目を見詰める。 蘭の黒曜石の大きな瞳が潤んで新一を見詰め返す。 新一はそのまま吸い寄せられるように、蘭の唇に自分のそれを重ねていた。 新一が唇を離した時、蘭は目を閉じたまま震えていた。 「工藤くん・・・」 新一は蘭の耳元で囁く。 「新一、だよ、蘭」 「新一・・・?」 「そう」 そして再び新一は蘭に口付ける。 蘭は抗わなかった。 新一は夢中でその柔らかな感触をむさぼった。 蘭の唇の隙間をぬって新一の舌が蘭の口腔内に侵入した時も、蘭は僅かに身じろいだだけで、それを受け止める。 新一の舌は震える蘭の舌を捉えて絡みつく。 蘭の唇に触れた時から、新一の下半身は熱を帯び始めていた。 蘭をこのまま離したくない、と思う。 けれど同時に、蘭を大切にしたいと、この先もずっと付き合いたいと思っていたから、新一は今日の時点でこれ以上の関係を焦るつもりは全く無かった。 やがて名残惜しげに蘭の唇を解放した新一は、蘭を促して立ち上がらせた。 「これ以上遅くなるとまずいだろ?そろそろ帰らねーとな」 蘭は街灯の灯でも判るほどに真っ赤になって新一を見上げた。 次に蘭の口から出た言葉に新一は度肝を抜いた。 「今夜はお父さんが家に居ないの。 それに、園子の家に泊まるって言って出て来たし。 私、私・・・今夜はあなたと一緒に・・・!」 そう言って新一にすがり付いてきた蘭を抱き留めながら、新一の頭の中は暫らく真っ白になっていた。 「あのさ・・・蘭。 今夜は・・・その・・・帰った方が良い」 新一は口の中がカラカラに乾いて掠れた声で、ようやくそれだけ言った。 蘭は目に一杯の涙を溜めて恨みがましく新一を見た。 「ねえ。 私ってそんなに魅力無い?私相手じゃその気になれない?」 「バーロッ!んな訳ねーだろっ!」 怒鳴ってしまってから新一は後悔し、俯いてしまった蘭の肩に手を掛けて慌てて言う。 「ご、ごめん、怒鳴って悪かった。 けどよ・・・さっきみたいなキスをしといて、俺にその気がねーなんて事、ある訳ねーだろ。 はっきり言ってしまえば、俺、蘭とそうなりてーって、すっげー思ってる!」 蘭が顔を上げ、驚いたように新一を見た。 「けどよ・・・それ以上に、蘭、おめーを大切にしたい。 この先ずっとおめーと付き合って行きたいって、思ってっからよ・・・だから、急ぎたくねーし、俺の欲望でおめーを汚したくねーんだ」 蘭は涙を溜めた目で、しかし幸せそうに微笑んで言った。 「新一。 ありがとう、そんな風に思ってくれて。 でも、だったら、尚の事・・・お願い・・・。 私、私・・・。 それに、すごくおっきい・・・こんな所に一人で暮らしてるの?」 「ああ。 道楽もんの両親が俺一人を置いてさっさと外国に行ってしまったからな」 工藤邸は、米花町二丁目にある馬鹿でかい古い洋館だった。 表は幽霊屋敷のような風情だが、玄関を入ると中は比較的綺麗に保たれている。 蘭は懐かしそうに目を細めて屋敷内を見回した。 「何でだろう?ここって、何だか懐かしい・・・」 「ああ・・・蘭が昔ここに来た事があるからだろ?」 「え!?」 蘭は驚いたように目を見開いた。 「新一、昔って・・・!」 「あれは確か小学校に上がったばかりの頃だから・・・十年前かな?母さんの高校時代の友人だって言う弁護士の妃英理さんと、その頃は警察官だった毛利小五郎さんに連れられて、蘭が家に来たのは・・・」 そんな事があったのかと蘭は驚く。 何しろ十年も昔の子供だった頃の事、蘭の記憶には残っていなかった。 ふいに新一が蘭を横抱きに抱えあげ、階段を上り始めた。 蘭は真っ赤になる。 「新一・・・!」 新一が優しいキスを蘭の唇に落とす。 「上の俺の部屋で。 良いだろ?」 蘭はコクンと頷き、新一にすがり付いた。 二階の部屋のドアを開け、新一はベッドの上にそっと蘭を降ろした。 新一が子供の頃から使っている寝室である。 この部屋で、昔おめーは将来俺のお嫁さんになるって誓って、俺からのキスを受けたんだ。 あれが、俺にとってのファーストキス・・・蘭も、だろ?」 「あ・・・思い出したわ。 お母さんの友達のお家っていう大きなお屋敷に行って、そこの男の子とまま事みたいに将来を誓った・・・私あれ、あんまり現実離れした情景だったから、夢かとばかり思って・・・今迄忘れてたのよね・・・」 新一は蘭を抱き締めて口付け、耳元で囁く。 「俺は・・・おめーを忘れた事無かった。 あの頃と変わらない。 おめーの事ずっと・・・想ってた・・・」 「ねえ、新一は、あの広場で出会ったとき、すぐに私がその女の子だって判ったの?」 「その前から。 去年、京極の空手の試合を見に行った時さ、女子の試合の中で一目でおめーを見つけた。 だからいつかお近付きになろうってチャンスは狙ってたんだけどさ、まさかあそこで会えるとは思って無かった」 「私・・・新一があの時の男の子だって事は判ってなかったけど・・・高校生探偵として活躍してるあなたの姿に憧れていたし、いつも空手の試合の時、応援席に居るあなたの姿は見かけてた。 探偵の時の顔と違う普通の高校生の顔してるあなたを・・・私、どっちの姿も・・・とっても好きだよ・・・」 蘭が顔を真っ赤にして告白する。 新一は微笑み、再び蘭を抱き締めて口付けた。 新一の手が蘭の身に付けている物を一枚ずつ取り去っていく。 目を射るような肌の白さ。 蘭の胸を覆っていた下着を取り去ると、想像以上に大きな盛り上がりが現れる。 柔らかそうだが弾力があり、横たわって下着を外しても横に流れる事無く綺麗な形を保っている。 「蘭、綺麗だ・・・」 新一が感嘆の溜息を吐いて言った。 胸の隆起の頂に、薄紅に染まった果実があり、新一はそれを口に含んで舌先で転がす。 「ああああああん」 蘭の口から嬌声が漏れ、次いで蘭は自分が出した声が恥ずかしかったのか、必死で唇を噛み締めていた。 感じやすいようだな、と新一は思ったが、それを口には出さない。 『忌まわしい事を忘れさせて欲しい』 そう蘭は言った。 下手な事を口に出すと、蘭の心を抉る怖れがある。 忌まわしい事というのは、おそらく過去、蘭を汚した男が居るのだろうと新一は解釈していた。 たとえ蘭にどんな過去があろうとも、自分の気持ちはいささかも変わらないし、全てを受け入れる心算で居るし、大切にして行きたいと思っている。 もし蘭が過去誰かを愛し愛されたと言うのなら、やはりどこかで嫉妬はしてしまっただろうと思う。 けれど、蘭が過去誰かに汚され傷つけられたと言うのなら・・・嫉妬は微塵も感じないが、その見も知らぬ男に対し、殺しても飽き足りないだろう程の憎悪を覚える。 『殺人者の気持ちだけは判らないと思っていたけど、愛する者の為には人を殺したい程憎んでしまう事があるんだな・・・』 けれど、蘭は新一の腕の中で忌まわしい事を何もかも忘れたいと言った。 その事はとても嬉しいし、新一は全身全霊をかけて蘭を愛し、蘭を全て包み込みたいと思った。 『忘れさせる。 何もかも。 俺の事だけを感じて考えるように』 新一の手と唇は、優しく隈なく蘭の肌をたどって行く。 蘭を覆う最後の布が取り去られ、新一の指が蘭の繁みの奥に届いた。 「あ・・・あっ・・・しん・・・いち・・・」 蘭が途切れ途切れに新一の名を呼ぶ。 愛してるよ」 新一は優しく言って、蘭の足を大きく広げ、その奥にある美しく妖しく輝く真紅の花を見た。 そこはもう、新一を受け入れるのに充分な程に潤っているようだった。 『でも、蘭の恐怖感を充分取り除いてやんねーとな。 事を急いで苦痛を与えたくはねーし』 どうしたってまだ慣れない行為に多少の苦痛は伴うだろうが、出来る限りそれを少なくしたいと新一は考えていた。 蘭のそこに口を当て、舌先で愛撫をする。 「あ・・・新一っ、や・・・そんな・・・とこ・・・」 蘭が身を捩じらせる。 けれどやがて再び蘭の口から喘ぎ声が漏れだす。 頃合と見て、新一は蘭の中に指を入れてみた。 入り口が狭く、内部もきつく締め付けてくる。 「くっっ・・・あつうっ・・・」 蘭の口から今度は苦痛の呻き声が漏れる。 『まだキツイか・・・けど蘭、おめーの痛みは俺が必ず全て取り除いてやっから・・・』 少しずつ蘭が慣れて行く様子を見ながら、新一は蘭の中に入れる指の数を増やしていく。 「はっあっ・・・・あああああああっ・・・はああっ」 蘭が体を仰け反らせ手足を突っ張らせて叫び、次いで全身が弛緩してぐったりとなる。 初めて絶頂に達したようだった。 新一は、両親の寝室で見つけておいた物を自身に嵌めようとしていた。 直に蘭の内部を感じたいのは山々だが、これからの事を考えれば、蘭を傷つけかねない事は出来ない。 「新一・・・?」 放心していた蘭が声を掛けてきた。 「新一、お願い。 そんなもの、嵌めないで・・・」 蘭の言葉に新一は驚く。 「だ、だけど蘭・・・」 「今日は安全日だから・・・それに、直にあなたを感じたいの・・・」 新一は「安全日」等と言うものがいかに当てに出来ないのか、知識としては知っていた。 けれど、蘭の必死な様子に流されてしまう。 それに、おそらく蘭の傷を癒すのには必要な事なのだろうと言う気がしていた。 いざという時は・・・責任を取れるのは出産後になってしまうが、新一はそこまでの覚悟を固めて蘭を抱き締める。 蘭の足の間に自分の体を入れ、蘭の中に入りたくてそそり立っていた自身を、蘭の入り口にあてがう。 蘭の体がピクンと動いた。 「蘭、行くぞ」 蘭は目を閉じ、無言で頷いた。 新一は少しずつ蘭の中に入り込んで行く。 蘭の内部は熱く、きつく新一自身を締め付けて来て、新一はそれだけでイキそうになる。 「あう・・・くっっ・・・」 新一は天にも昇るほどの気持ち良さを感じているが、蘭はやはりまだ苦痛らしく、顔を歪め、呻き声を上げた。 新一は出来るだけ蘭に快感を与え苦痛を取り除こうと、蘭に深く口付けながら胸の頂に色付くものを指で擦る。 やがて蘭のそこが少し緩み、新一は自身を全て蘭の中に埋め込んだ。 蘭が落ち着くのを待って新一は少しずつ腰を動かし始める。 「あっ・・・新一・・・あああん」 やがて蘭の口からは苦痛の呻き声と違う歓びの声が漏れ始め、その瞳に快楽の色が浮かぶ。 「蘭、蘭、蘭・・・っ!」 蘭の変化を見て取り、新一の心は高揚する。 何度も蘭の名を呼びながら、段々と新一の動きが激しくなり、何度も蘭の奥深くを突く。 「あああああん、新一っ、あっはっ・・・あああああああああっ」 やがて蘭が体を仰け反らせ手足は新一にしがみ付きながら絶頂の歓喜の声を上げた。 それと同時に、新一は蘭の中に熱いものを放った。 「蘭・・・まさか・・・」 事が終わって、新一は蘭を抱き締めながら暫らく横になっていたが、やがてシーツの上に紛れも無い蘭の処女喪失の印を見て言葉を失う。 「新一・・・?」 「蘭・・・初めてだったのか・・・?」 蘭の目に怒りと悲しみの色が浮かび、涙が盛り上がる。 「新一、ひどい!私、キスもこんな事も、今日が初めてだったのに!」 「い、いや・・・おめーが『忌まわしい事を忘れたい』なんて言うから、てっきり辛い体験があったのかと・・・でも俺、蘭の過去がどうであれ、大切だって事には変わりねーんだ!」 蘭は少し悲しげに目を伏せた。 「新一、そんな風に思ってくれて、とても嬉しい。 でも、あのね・・・私が言った『忘れさせて欲しい忌まわしい事』って、過去の事じゃなくて、未来の事、なの」 「未来の事?」 次に蘭が言った言葉は、文字通り新一の心を貫くものだった。 「私ね。 結婚するの」 (4)に続く +++++++++++++++++++ (3)の後書き 最後の蘭ちゃんの台詞を除けば、ほぼ皆様の予想通りの内容だったのではないでしょうか。 次回で、蘭ちゃん園子ちゃんが思い詰めた事情が明らかになります。 戻る時はブラウザの「戻る」で。

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そっと耳元で

耳元 で そっと 何 か 言っ た の

軽い火傷程度の傷だけれど手首を動かすと痛みが走るし、ドクターに診て貰ったら 三日間は利き手に負担を掛けないよう安静にしていないと駄目だと言われた。 傷口に薬を塗られ丁寧に包帯を巻かれた後、病院を出た俺は… 憂鬱な気持ちで宿屋へと戻った。 宿屋の一階はちょうど夕食時ということもあり、賑やかな声が飛び交っていて… 忙しそうにテーブル間を動き回って注文を取ったり料理を運んでいるランに 「いつもの日替わりメニュー」を頼んで、そのまま近くの椅子に座った俺は 包帯をしている方の腕をテーブルの上へそっと乗せ、反対側の腕で肘を付いた。 少なくとも三日間はこのまま包帯を巻いた状態でいないといけないし、爺さんに話したら きっとまた「そんな怪我をするのは集中力が足りないからだ!」と小言をくらうに違いない。 「まったく…ツイてないよな、俺。 」 そう呟きながら溜め息を吐くと同時に、二階から降りてくるクリフの姿が見えた。 クリフは俺の座っているテーブルへと近付くと、カウンターにいるランに向かって 「日替わりメニュー…いいかな?」と料理を注文する。 少し離れた厨房から聞こえる「父さん、オーダー追加ね。 」というランの声にボンヤリと 耳を傾けながら、俺の向かい側へ座ったクリフへ「よう、お疲れさん。 」と言って 視線を移すと、クリフはテーブルに置かれた俺の手を見て…驚いたように目を見開いた。 「グレイ、その手…一体どうしたの?」 「いや、実はさ…」 クリフのそんな問いかけに、鍛冶屋で怪我をしたことを話すと 「それは災難だったね、でもまあ…軽い怪我で済んで良かったじゃない。 」 そういってクリフは慰めるように俺の肩をポンポンと軽く叩く。 「まあな…でも、これでまた爺さんにたっぷり小言を貰うかと思うと今から気が重いぜ。 」 「そんなこと言ったって、サイバラさんも心配してるんだと思うよ。 」 「心配してくれてるんなら、もうちょっと優しい言葉を掛けて欲しいもんだ。 」 俺が溜め息混じりにそう呟きクリフが笑ったところで、料理が乗せられた盆を 両手に持ったランがやって来て、俺たちのテーブルへ料理を置いた。 「おまちどうさま、今日の日替わりはミートソースのパスタセットだよ!」 テーブルの上で温かそうな湯気を立てるパスタやスープ、そして新鮮そうな野菜のサラダは どれも凄く美味そうで…沈んでいた気分が一気に浮上した。 ふと、テーブルにスプーンとフォークをセットしているランが…俺の手に巻かれた包帯に 気付いたかのように首を傾げる。 「…あれ?グレイその手、怪我したの?」 「そうなんだ、今日鍛冶屋でちょっと火傷しちゃってさ…」 俺がそう説明すると、ランは「あちゃー…それは大変だったね。 」と心配そうな表情になった。 「そっちの手って確かグレイの利き手でしょう?その手だとパスタはちょっと食べづらいかも… なんだったら父さんに言って、食べやすいメニューに代えて貰おうか?」 確かにランの言うとおり、反対の手で扱うフォークはパスタを上手く巻き取ることが出来ず 皿の上にパラパラと零してしまう。 「あー…確かに。 でもせっかく作ってもらったんだし、いいよこれで。 ゆっくり時間掛けて食べれば大丈夫だろ。 」 日替わりメニューの中身を確認しなかった俺が迂闊だったんだし、せっかくの料理を無駄に することもないよな、と思って俺はランの申し出を丁重に断った。 「よかったら僕が食べさせてあげようか?」 向かい側で既に食事を始めているクリフが冗談交じりにそんなことを言うもんだから… 「勘弁してくれ、何が哀しくて野郎に食べさせて貰わなきゃならないんだ。 」 クリフに料理を口まで運んで貰う…なんて、一体何の罰ゲームだよ!と思いながら 俺は再度フォークを握った。 「本当に大丈夫?」 と尚も心配するランに向かって、クリフが「大丈夫だよ、僕に良い考えがあるから。 」と 笑顔で言っているのが聞こえたが、俺は構わず食事を再開した。 「なんだよクリフ、良い考えって。 」 一向に上手く巻き取る事の出来ないフォークの動きに少し苛立ってきた俺は 一旦それをテーブルに置き、スープの入ったカップを口元へ近づけながらそう尋ねる。 「まあ、もうちょっと待ってて…もうすぐ来ると思うんだけど。 」 クリフはそう言って入り口である扉の方を眺めた。 なんだ?もうすぐ来るって。 まさか、爺さんに食べさせて貰え…なんて言うつもりじゃないだろうな? そんな馬鹿な、と軽く頭を振っておかしな考えを頭から追い出しているうちに… 入り口の扉が開き、奥のカウンターへ歩いていくクレアさんが見えた。 なんとなく、そんな彼女の姿を視界の端に入れ辿っていると 「クレアさん、ちょっとこっちに来てくれないかな。 」 突如立ち上がり、彼女の元へ歩いていったクリフが彼女に声を掛けている。 「二人とも今晩は。 どうしたの?」 明るい笑顔で俺たちのいるテーブルへクリフと共に来た彼女は、俺の隣に座りそう言う。 「実はね、グレイが今日鍛冶屋で怪我をしちゃったらしくて… 暫く利き手が使えないらしいんだ。 さっきから食事も上手く出来ないみたいだから もし良かったらクレアさんに手伝って貰えないかな、と思って。 」 何を突然言い出すんだ、と思いがけない言葉に驚き…危うく口に含んだスープを 吹き出しそうになった俺は、どうにかそれを飲み込むとクリフの方へ視線を移す。 「ちょっ…クリフ、お前急に何を言い出すんだよ。 」 少々咽せながらそう口を開いた俺に、彼女は心配そうな表情を浮かべて 俺の腕を眺めながら「グレイ、手の怪我は大丈夫なの?」そう尋ねるから、俺は慌てて 「別にたいしたことないんだ、3日くらい包帯は取れないみたいだけど…ちょっとした 火傷程度の傷だから。 」 そう言って利き腕を動かそうとした。 けれど、やっぱり動かした瞬間…鈍い痛みが走り思わず顔を顰める。 「そんなこと言って、傷が痛むんでしょう?無理しない方が良いよ。 私で良かったらなんでも手伝うから。 」 心配そうにそう言う彼女が、俺の利き腕じゃない方の手にそっと触れた瞬間 どうしようもないくらい胸がドキドキして、思わず俺は彼女から目を逸らし クリフの方へ顔を向けた。 クリフの奴、しれっとした顔で食事を続けてるし… 「とりあえず、食べられそうだったら少しずつでも食べた方が良いよ。 はい、あーん…して。 」 彼女の声がする方へ殆ど無意識に顔を向けると、綺麗にフォークへ巻かれた パスタがゆっくりと口元へ近づけられた。 「…………!!!!!」 みるみるうちに顔全体が熱く火照って、彼女の顔をまともに見ることすら出来ず 俺は俯いて、必死に口を動かした。 まさか、クレアさんが俺のために料理を口元まで運んでくれるなんて… 頭の中にボンヤリと霞が掛かったみたいで、今の出来事が夢のように感じた。 「ダッドさん特製のミートソースパスタ、美味しそうだね!」 笑ってそう話すクレアさんに慌てて頷いてはみたものの、正直味わう余裕なんて あるはずもなく、俺はただぎこちなく口を動かす。 「グレイにとって、今まで食べた何よりも美味しいんじゃない?」 先に食べ終わったらしいクリフが笑って呟いた言葉に、助けられたような気がして 俺はその言葉に再度力強く頷いた。 「ホントに?それじゃ私も後で食べてみようかな。 」 楽しげにそう言いながらフォークを動かす彼女へ、そんな言葉の意味はきっと半分も 伝わっていないと思うけど、それでも俺は充分すぎるほどに幸せだ。 「こうして見てると、二人は仲の良い夫婦みたいだね。 」 ランがテーブルを片付けやすいようにだろう、食器を隅へと重ねながらそう言ったクリフに 彼女の手がピタリと止まった。 心なしか頬が赤い気もする。 そんな彼女の熱が移ったみたいに、俺の顔も益々熱くなって…思わず帽子で顔を 隠したい衝動に駆られた。 「や、やだなぁ…クリフったら。 そんなこと言ったらグレイに悪いよ。 よりによって私を相手に夫婦だ…なんて。 」 「そんなことない!!」 気付けば、考えるよりも先に…そう声に出していた。 「逆に俺なんかには勿体ないっていうか…そうなってくれたら最高に嬉しいけど その、なんていうか俺…クレアさんのこと好きだから。 」 そう言って思わず立ち上がった俺をポカンとした表情で見上げる彼女の様子に 俺はその場で我に返った。 勢いに任せて何を言ったんだ、俺は。 これじゃまるで告白したも同然…しかもこんな場所で。 目の前にはクリフもいるっていうのに。 「ご、ごめん…突然変なこと言って。 」 小さな声で呟いて力なく椅子へ座り込んだ俺は、心底格好悪いと自分でも思う。 「食事、手伝ってくれて本当にありがとう…俺そろそろ二階に…」 正直これ以上ここにいるのは居た堪れない気がして、俺は部屋へ戻ろうと 立ち上がり掛けた。 その時 「ちょっと待って。 」 クレアさんが俺の服の袖をそっと掴んで呟く。 「私はグレイがそんなふうに言ってくれて、凄く…嬉しいよ。 だって私もグレイのことが好き…だから。 」 顔を真っ赤に染めながらそう発せられた彼女の言葉がすぐには信じられなくて… 俺は軽く頬を抓ってみた。 もちろんサイバラさんの分も一緒に。 」 それでもまだ夢の中にいるみたいに幸せで固まった頭の中へ、優しい彼女の声が ゆっくりと浸透する。 「ありがとう。 クレアさん手作りのお弁当なんてすっげー嬉しい。 」 気が付けば、自然と笑顔が零れてしまっていた。 今まで周りを見回す余裕さえなかったけれど、俺たちはいつの間にかフロア中の注目を 浴びていたみたいで…いつから居たのか、遠くのテーブルから爺さんの「ウォッホン!」という わざとらしい咳払いが聞こえた。 すぐ隣のテーブルではデュークのおっさんが「いいぞー!!ご両人!」などと言いながら 気分良さそうに口笛を吹きながら手を叩いている。 カウンターではお盆を抱えたまま俺に向かってVサインを送るランの姿が見える。 すぐ目の前ではクリフが、笑いを堪えたまま 「とりあえず、この先1週間の夕食はグレイの奢りだね。 」 そう言って俺の背後に回り、背中をバンと叩き…そのままカウンターへと歩いて行った。 俺とクレアさんは互いに顔を見合わせ、赤い顔のまま周りの歓声に向けてぎこちなく 笑顔を浮かべた。 幸せと驚きで未だ上手く頭が回らない俺の耳元で 「当分、周りが騒がしくなりそうだから…明日から夕食はうちに食べにおいでよ。 」 恥ずかしそうな笑顔と共に囁かれた、彼女からの言葉に大きく頷いた後 俺は右手の包帯に視線を向ける。 さっきまで憂鬱でしかなかったはずの怪我が、今は幸福の象徴のように思えた。

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そっと耳元で

耳元 で そっと 何 か 言っ た の

智之先輩が。 イカにも、 『重い・・!!』 とか言いたげな顔で。 大量の荷物を持ってくる。 もらい物がいっぱいあるみたい。 何かあったのかな・・。 今日・・・・。 「凄い量のプレゼントですね〜・・」 「毎年増えていく気がする・・・何故だ・・・・?!」 ソレは・・・・自覚してください。 「今日なんかあるんですか?」 「ぇ・・・・?は、くれ・・・・・ないの?」 「・・・・・何をですか?」 今日なんかあったけ・・・? バレンタインには間違っても早いし・・。 部活で何かあったのかなぁ・・・・・。 ぁぁぁ・・・・! なんてこと考えてたら。 先輩が〜・・・ッ!! で、保健室・・・。 に来たのはいいんだけど・・・・。 先輩が貧血・・?で倒れてしまって。 近くにいた男子を捕まえて手伝ってもらった。 もう放課後だし、なんも問題もなく。 私は保健室で先輩の眼が覚めるのを待っている。 一体今日は何があるのというのだろう・・。 解からないから。 早く目を覚まして。 教えてください。 私の為だけに・・E。 「ん・・・・アレ・・・・・・ここ・・・」 「ぁ、よかった・・・智之先輩、大丈夫ですか?」 「あぁ・・・・・ゴメン。 迷惑かけたね・・・」 「ソレは〜・・・良いんですけど・・・・・・」 私一体何をした・・・・? 「アレの事?」 智之先輩が指差したのは。 たくさんのプレゼント。 「えぇ、まぁ・・」 「アレ見て何か思いつかないの?」 「部活で何か凄い事が有った・・・・とか」 そう言うと先輩は。 ものッ凄く深い溜息をつく。 「のぬけは天下一品だな・・・・」 「・・余計なお世話です」 「じゃあ、お前の為だけに教えてやるよ」 ブラウスをつかまれ。 引き寄せられて。 耳元で、そっと。 「今日は、俺の誕生日」 「・・・・?」 事実を告げると。 は本当に知らなかったみたいで。 固まって動かない・・・。 「?ー?」 目の前で手をヒラヒラしても。 まるで気付かない。 方を少し揺さぶると。 やっと反応して。 「きょ・・・・お誕、生日・・・・なん・・・ですか」 「うん。 そうだよ」 の顔がどんどん青くなっていく・・。 俺、マズイことしたのか・・・? 「な・・・・・・」 「な?」 「何でちゃんと教えてくれなかったんですかぁッ!!!」 「・・・言ってなかったっけ?」 「そんなの聞いてないです!!・・・・何にも出来ないじゃないですか」 「・・・ゴメン。 知ってるって・・思ってたから・・」 そう言ったら。 お前は今にも泣き出しそうなカオをしながら。 首を横に振って。 「知らない私がいけないだけですから・・。 だから・・・」 カーテンという仕切りはある。 でもまさか。 こんな所で。 「コレで許してくださいね」 キス。 されるなんて。 「お誕生日、おめでとうございます」 最高の笑顔で。 一番素敵な言葉を言われる。 嬉しさと、照れで。 真っ赤に染まった顔を。 お前に見られたくないから。 ギュッと。 強く抱きしめて。 「最高のプレゼントだ。 019 高雅雪火 コメント いかがだったでしょうか〜? 1日早いカタチになってしまいましたけど 笑。 最近森川さんの一人称が私の中で「俺」に固定されています ェ.

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